はじめて知った世界の色は
着いた先は川の下流にある河川敷。太陽の光が水面に反射してキラキラとしていた。
「本当にここなの?」
「うん。ここでエメラルドに会ったんだよ」
エメラルドがどこから迷い混んできたか分からないけど、子猫だしそんなに移動ができるわけじゃないから、緑斗が最初に発見した場所に行けば飼い主に繋がるなにかが見つかるかもしれないと思ったんだけど……。
「っていうかなんで緑斗は河川敷にいたの?」
周りに外灯もないから夜は絶対真っ暗だろうし、私なら絶対に近づかない。
「えー。だってひとりでさんぽしてもつまらないし、翠ちゃんが眠るまで河川敷でボーッとしてたんだよ」
「………」
そんなことを言われると次から緑斗を追い出せなくなる。
記憶がないってどんな感じなんだろう。私も消したい記憶はたくさんあるけどその感覚は想像もできない。
「まあ、そのおかげでエメラルドを見つけられたし、俺が気づかなかったらそのまま川に落ちてたかもしれないしね」
緑斗はいつだってポジティブだ。
だから幽霊でいることも記憶がないことも大丈夫なんじゃないかって、そう錯覚してしまいそうになる。