はじめて知った世界の色は
「だから翠ちゃん。ここに手掛かりはなかったけどエメラルドの飼い主をまだ一緒に探してくれる?」
こんなに心配されてるっていうのにエメラルドは呑気に草むらで白い蝶々を追いかけている。
それが丸い毛玉が跳ねてるみたいで自然と和んでしまう。
「今さらなに言ってんの。私をこうして外に連れ出したくせに」
ここで帰ったらこんなに武装した意味がなくなる。
「ありがとう。翠ちゃんは優しいよね」
透明な緑斗と後ろの川が同化して、まるで緑斗がダイヤモンドになったみたいに見える。
なんだかとても神秘的。
「は、早く探さないと日が暮れるから行くよ!」
だけどそれを言葉で表現できそうにないから、私は早口になってエメラルドを再び抱き上げた。
と、その時……。
「――ミルク!!」
そんな声と一緒に勢いよく土手をかけ降りてくる人影。そしてそのまま私たちのほうに走ってくる。
「ハア……すいません。その猫うちの子で……」と息を切らせながらエメラルドを指さした。