はじめて知った世界の色は


エメラルドも分かるのか「ニャア」と落ち着きがなくなって飼い主のほうに行きたくて手足をバタバタさせている。


「すいません。昨日ゲージに入れて移動してたら途中で脱走してしまって……。でも良かった。無事に見つかって……」

瞳を潤ませているからどうやら本当にエメラルドの飼い主のようだ。緑斗と顔を見合わせて私は安心したようにエメラルドを差し出した。


……ドクン。

だけどその手が何故か震える。

だって、だって……。


「ありがとうございます……あれ……」

その子もなにかに気づいたように目を丸くさせていた。


「もしかして……茅野さん?」

そう、エメラルドの飼い主は私のクラスメイトだった。


人気がない河川敷だったし、油断してマスクを下げたままにしていた。まさか本当に知り合いに会ってしまうなんて。


ドクン、ドクンと心臓が飛び出そうなほどうるさい。

地面に足が着いてるはずなのにクラクラする。
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