はじめて知った世界の色は
泣きたいのはこっちなのに森川さんがボロボロと泣いてるから強く突き放すこともできない。
「まさか茅野さんへのいじめが悪化すると思わなかったの……っ。ただ収まればいいと思って私は先生に……」
「なんで森川さんがそんなことしたの?」
教室では私へのいじめに加担する人と傍観者で見て見ぬふりをする二種類の人たちがいた。
森川さんは後者のほう。
「……私には止められないし、止める力もないし。だけど茅野さんがひどいことをされてるのを見ると胸が傷んですごく苦しくて……」
「だから、なんで森川さんがそんな風に思うの?関係ないじゃん。関係ないでしょ?」
今さら人に嫌われるのは怖くない。
別に森川さんを責めてるわけじゃない。
先生に言ったことも、それでいじめがひどくなったことも、森川さんが悪いんじゃない。
だけど、どうしてもモヤモヤしてしまう。
だってあの教室で私はひとりだった。助けてほしい時、誰も私のことを見てくれなかった。
それなのに……今さらこんなことを打ち明けられて私にどうしろって言うの?
そんなのは森川さんが許されたいだけ。責任から逃れたいだけだ。
すると森川さんは固く閉じていた気持ちを呼び起こすように涙を拭いた。
「だって私も昔はいじめられてたから」