はじめて知った世界の色は


ギュッと手を握りしめたのを私は見逃さない。


「小学校から中学を卒業するまでの9年間、ずっと同じ人にいじめられてた」

ドクンと心臓が跳ねる。

私は4月から6月までの2か月だったけど、苦しくて永遠に続くんじゃないかってぐらい時間の進みが遅かったのにそれが9年間……?

考えただけでゾッとしてしまう。


「私も友達だった人にいじめられてたの。小学生の時に些細なことで喧嘩して、それから毎日イヤなことばっかりされてた」

「………」

「成長と一緒にいじめ方も変わって、中学生の時なんてモップで身体を叩かれたり髪の毛を切られたり、プールに沈められたこともあった」

「………」

「いじめってやればやるほど加減が分からなくなって、同じ人間なのにやってる側はそう思わなくなる。だから茅野さんがいじめられてるのを見ると私もツラかった」

それでもどうにもできない気持ち。どうにかしたいけど、いじめの恐怖を誰よりも知っているから踏み出せない気持ち。


だから森川さんは先生を頼った。

私へのいじめがなくなるようにと。
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