はじめて知った世界の色は


「う、うるさいな。聞いてるよ」

だから不自然に私は目を反らしてしまう。


「じゃあ、早速いこ……」

「ムリ」

やっぱり言うと思った。

目の輝きが欲しいオモチャを前にした子どもみたいだし、緑斗の言い出すことはなんとなく読み取れるようになっていた。


「なんで!行きたい!」

「緑斗がひとりで行けば入園料タダじゃん」

「そういう問題じゃないよ!」


なんで私が怒られてるのか分からないけど、そもそも私が学校がある平日に水族館に遊びに行って、しかも緑斗は他の人には見えないから私がひとりで行ってるように思われて……。

そっちのほうがだいぶ問題だと思うのは気のせい?


「グランドオープンって無駄に混むし近所の人とかいそうだし。色々面倒くさいからイヤだ」

「でも翠ちゃんだって水族館好きでしょ?」

「……それは……」

否定できない。

部屋にはアザラシのぬいぐるみが飾ってあるし、昔から遊園地よりも水族館派だったから。


「きっと館内は暗いし知り合いに会ってもバレないよ。せっかくの夏なんだし、ね?」

「………」

結局私はあまり長居はしないという条件で隣街の水族館に行くことになった。
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