はじめて知った世界の色は
考える暇もなく男の子の表情がパアッと明るくなって、私との距離を一気に詰めてきた。それは初対面じゃありえないぐらいの近い。
「ちょっと俺の話を聞いてくれない?いや、聞いてください。お願いします……!」
深々と頭を下げる男の子。
えっと……この状況はなんなんだろう。
なにかの勧誘?新手の詐欺?どっちにしても怪しい人には変わらない。
「とりあえず……俺をきみの家に連れて行ってくれませんか?」
まるで子犬のように潤んだ瞳で私を見ている。
あ、って思った。
暗闇にだんだんと目が慣れてきて、男の子の姿がハッキリと見えるようになった頃。
月明かりに照らされた男の子の身体が透けていた。
分からないけれど、この人が他の人とは違うということ。そして久しぶりに誰かと会話をしたこと。
さっきまでどこか知らない場所に行って消えてしまいたいと思っていたはずなのに、
今にも消えてしまいそうなきみに出逢って、
逃げ出したい気持ちより、きみへの興味のほうが勝ってしまったことがちょっとだけ悔しかった。