はじめて知った世界の色は


「え、待って。嘘でしょ……」

それからも順序通りに海の生き物を見て回ったのに、さっきから緑斗は不満顔。


「仕方ないじゃん。諦めなよ」

水族館のメインイベントでもあるイルカショーやアシカのパフォーマンス。観覧は無料だけど人が多いせいで観覧できる人数に制限がかかって、どこも満員。

早い人は2時間前から並んで席を確保してたらしい。

こういう時のお父さんって大抵並ぶ係にされるから可哀想に思えるけど。


「え、じゃあトドは?セイウチの飛び込みショーは?」

「だから席がいっぱいなんだって!さっき散々アナウンス流れてたじゃん」

「そんな……」

悲しい顔をされても私にはどうすることもできない。


「可愛いカワウソが見れたからいいじゃん」

けっこう冷めてる性格だと自分自身で思ってるんだけどアレは可愛すぎた。興奮して写メを撮りまくっちゃったし、あんなに人目を気にしてたのが嘘みたいに思える。


「でも水中トンネル通ってくれなかった」

「1回だけ通ったよ。緑斗が後ろの水槽にいたチンアナゴに夢中になってる間に」

「………」

こんな会話をしてる間にも緑斗が見られなかったショーが始まって、館内にいるのは席を確保できなかった残念組だけ。
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