はじめて知った世界の色は
「まだ見てない場所があるんだしいいじゃん。
空いてる内に行こうよ」
無意識に手を伸ばして「あ……」とすぐに引っ込める。
普通に喋りすぎて近くにいた人がチラチラと私のほうを見ていて気まずい。
そんな私の様子に気づいた緑斗が〝ごめんね〟と言ってるかのようにフーッと息を吐く。
「向こうに行こう。あっちなら人がいないからさ」
きっとペンギンとかサメとか人気がある生き物が見たいはずなのに緑斗は人気がないほうを指さす。
逆に気を遣わせちゃったかな。
なんだか申し訳ない気持ちでいっぱい。
「俺、翠ちゃんを目立たせてるよね。本当にごめん」
着いたのは熱帯夜の水槽の前。
カラフルで可愛い魚ばかりなのに、水族館以外でも見ることができるからか人がいない。
「別にそんなこと緑斗が気にしなくていいよ」
私が普通に喋りすぎただけだし、その意識を忘れるほど水族館を楽しめてることは良いことだと思う。
「むしろ、ちょっと感謝してる。なんだかんだ言って緑斗が来てから外に出る機会が増えたから」