はじめて知った世界の色は
緑斗は確かに他人だ。
他人、だった。少し前までは。
でも今はそうじゃない。だけど友達かと聞かれたらなにかが違う気がするし、もちろんペットだなんて思ってない。
まだ言葉にするのは難しいけど、緑斗を他人とは呼びたくない。絶対に。
「でも俺はいつまでも翠ちゃんとこうしていたいな」
私の心の声が聞こえたのだろうか。緑斗が私と同じ気持ちを言った。
「あれ?なんか顔赤くない?」
緑斗が私の顔を覗き込む。
「き、気のせいじゃない?あ、蚊!」
「え?どこ?フーフー」
うん。私も緑斗と許される限りずっといたい。
こんな気持ちになるなんて自分でもビックリ。
「あとでまたコンビニに寄って痒み止めを買ったほうがいいかもね」
「結局、緑斗の息吹きの効果なんて最初だけだったよね」
「頑張ったんだからちょっとは褒めてよ」
そんな会話をしながらベンチから腰を上げた瞬間にタッタッと背後から地面を歩く足音。
聞き覚えがある音に身体がピクリと反応する。
「……ハア……翠。ここにいたんだ」
それは息を切らせたお姉ちゃんだった。