はじめて知った世界の色は


「な、なんで……」

思わず捨てるはずのビニール袋を落としそうになった。


「珍しくお父さんたちが酔いつぶれて寝ちゃって。それで翠の部屋に行ったんだけど、いくら呼び掛けても返事がないし、外から見たら部屋の窓が開いたままだったからもしかしてって思って」

「………」

だからってわざわざ探しにくるなんて。

さっきまで緑斗とバカなことを言い合っていたのに、もう私の気持ちは沈んでいる。

蚊に刺された痒みなんて忘れたかのように私はずっと地面ばかりを見つめていた。すると私と同じようにお姉ちゃんの手にもコンビニのビニール袋が。


「久しぶりに花火やらない?」

それは手持ち花火のセット。

さっき私もレジの横で見たやつ。たしか650円。
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