はじめて知った世界の色は


私の返事を待たずにお姉ちゃんは花火セットの袋を破いてライターを取り出した。

「はい、翠のぶん」

可愛いピンクのフサフサがついた花火。そういえば私、小さい頃から花火を自分で選んだことがない。

いつもお姉ちゃんが危険じゃない手持ち花火を選んでくれて、火は危ないからとライターを付けるのもいつもお姉ちゃんだった。


暗闇に明るい火花が飛び散る。そのお姉ちゃんの火を私がもらって私の花火にも小さな花を咲いた。


「綺麗だね。花火なんて何年ぶりだろう」

お姉ちゃんがその光を見つめながら黄色い煙が空に舞い上がる。私のピンク色と混ざって表現できないような色になって。

お互いの花火が消える頃にお姉ちゃんが柔らかい顔で笑う。


「小学生の時も翠はよく窓から脱走してたよね。夜の学校を探索しに行きたいって」

……そう、だっけ。
 

「虫カゴ持ってオバケを捕まえるって言ってた」


頭弱いなあ、私……。

まあ、そういうオカルト系には強いほうだし、だから緑斗のこともけっこうあっさりと受け入れてしまったんだけど。

返事をしないまま成り立っていく会話。

お姉ちゃんは再び花火を選んで私に差し出す。今度はスイカのイラストが書かれた子ども用のやつ。
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