はじめて知った世界の色は
さっきの花火より火花は少ないけど、それでも飛び出る距離が長いから空中で絵を書いたら上手く書けそう。
そんなことをぼんやりと考えながら、だんだんと花火が小さくなっていってシュンッと儚く消えた瞬間――。
「翠、ごめんね」
隣から聞こえた小さな声。
気づくとお姉ちゃんは次の花火には手を伸ばさずに、ただ私のことをじっと見つめていた。
その顔があまりに弱くて泣きそうで、私は音もなくスイカの花火を地面に落とす。
公園があまりに静かだからどっちの心臓がうるさいのか分からない。
「私、翠が羨ましかったんだよね」
「……え?」
聞き返した言葉はなにも考えずに自然と出た。
……うら、やましい?
いま確かにお姉ちゃんはそう言った。私が目を丸くさせているとお姉ちゃんは遠い目をしながら星空を見上げた。
「翠は小さい頃から可愛くて、着てる服がなんでも似合って。お人形さんみたいだねって近所の人たちも言ってたぐらい」
はは、とお姉ちゃんは軽く微笑んだあと、その視線を少しだけ落とす。
「私も翠が大好きだった。でもね、そんな可愛がられる翠の横で私はお姉ちゃんだからっていつも後回しだった」