はじめて知った世界の色は
特別なペリドット
◇◆◇◇
それから時間は過ぎてカレンダーは8月になった。セミは毎日うるさいし気温は30℃越えが当たり前だし、夏は本当に好きじゃない。
それでも今年の夏は忘れられない季節になりそう。だって……。
「ゲホケホッ!」
私が部屋を掃除していると何故か緑斗が咳をしていた。
「ちょっと翠ちゃん、ホコリすごいっ……!」
確かに普段見逃しているベッドの下や本棚の裏は長年積もりに積もったホコリたちの棲みかになっていた。
「……っていうか幽霊にホコリは関係ないんじゃないの?」
汚れてもいい適当な服を着て私は四つん這いになりながら雑巾で床を拭いていた。
「こんなにホコリが舞ってたら気分的にむせるでしょ」
「そういうもんなの?」
「うん、そういうもん」
「ふーん」と相づちを打ちながらも私は掃除するのが忙しくて今日は緑斗に構ってられない。
ああ、最初はいらない雑誌を処分するつもりで始めたのに気づけばあっちもこっちも気になって、今は片付けてるはずなのに足の踏み場がない状態。
「翠ちゃん」
「んー?」
「カーテンが全開だと気持ちいいね」
薄暗い遮光カーテンは取り外して、花の模様がついている白いレースのカーテンが今は私の部屋についてる。
そしてそのカーテンはしっかりと両端で留められていて、窓からは爽やかな風が吹き抜けていた。