はじめて知った世界の色は


「祭りって夏の終わりがして寂しいけど、思い出した時に楽しかった気持ちしかないからまた来たくなるんだろうな、きっと」

周りの雑音に混ざって聞こえた緑斗の声。

それは私に向けてじゃなくて、まるで独り言を言ってるみたいだった。


……また来たい、か。

確かに私もお祭りの記憶は色濃く残ってるし、小さい頃なんて夢の国に来たかのようにはしゃいでた。

でもその記憶の一番上。

たぶん私は来年、再来年、そのあとの祭りでもきっと緑斗と来たことを思い出すんだと思う。

それを一緒に語り合えたらいいのに、もしその時に緑斗がどこにもいなかったら私はなにを見ても切なく感じてしまうと思うんだ。


だから遠い未来の話はやめて、せめて明日も明後日も緑斗と一緒にいたいな。

それで願わくば来年もたこ焼きを食べてタコが小さいって笑うの。


「翠ちゃん、夏が終わったら学校に行くんでしょ?」

それはちょうどカラフルな風車が売っている出店の前。 
< 89 / 180 >

この作品をシェア

pagetop