はじめて知った世界の色は


◇◆◇◇


ブーブーブー。

枕元で3分おきに鳴るスマホのアラーム。そのバイブ音を解除して私は部屋のカーテンを開けた。

夏の匂いを残しつつもカラッと晴れた清々しいほどの青空。「んー」と腕を伸ばしながらその日光を全身に浴びる。

なにやら視線を感じるなあと思ったら緑斗が片肘をつきながら私を見ていた。


「翠ちゃん、おはよ」


ベッドの横に作った簡易的な寝るスペース。床に薄いマットレスを敷いて手触りのいいふわふわのクッションが枕代わり。

最近の緑斗はいつもそこに寝ていて、お母さんには寝相が悪くてベッドから落ちることがあるから念のためにマットレスを敷いてると誤魔化している。


「翠おはよ。ソーセージとウインナーどっちがいい?」

「翠、ちょうどパンが焼けたから先に食べなさい」


リビングに降りるといつもの食卓にお母さんとお父さんの姿。時間は6時45分。

いつもその音を自分の部屋で聞き耳をたてているだけだった私が今日からは一緒に朝ごはんを食べる。
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