はじめて知った世界の色は


9月1日。今日から2学期。

クリーニングに出していたパリパリのYシャツに紺色のブレザー。膝上のチェックのスカートのファスナーを上げて首もとに赤いリボンを付ける。

久しぶりに腕を通した制服は少し重たい気がしたけど、それと同時に自然と私の気持ちを引き締めてくれた。


お父さんとお母さんはあえて私にたくさんの言葉はかけなかった。いつもと変わらない朝を過ごしてくれて、いつもどおりの会話をしてくれた。


「翠、いってらっしゃい」

余裕を持って支度を終えて、ふたりは玄関まで見送ってくれた。


「うん。行ってきます!」

バタンッと勢いよくドアを閉めて私はローファーの靴音を噛み締める。

ゴミだしをしている近所の人や犬の散歩をしてる人。自転車で私を追い抜いていく人や大あくびのサラリーマン。

そういえばこれが毎朝の光景だったなと思いながら、その景色の中に自分がいることが無性に嬉しい。
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