はじめて知った世界の色は

◇◆◇◇



「ねえねえ、あの子って……」

学校に着くと私を見るなりみんながざわざわとしていた。校舎の匂いも独特のピリッとした空気も久しぶり。

私はそんなひそひそ話なんて無視して上履きを履き替える。向かったのは2年2組の教室。

ドアを開ける寸前にちょっとだけ指先が震えたけど、それでも震えは覚悟と一緒にすぐにおさまった。


――ガラッ!

ドアを開けるとクラスメイトたちが一斉に私のほうを見て3秒ぐらい時間が止まる。


……ああ、本当に戻ってきたって感じだな。

みんなから浴びせられる視線の中で私は窓際の自分の席に着いて、そういえば教室でこの席だけが私の居場所だったっけ。


机のひんやりとした感触も本当に久しぶりで、
やっぱり少しだけ心臓の鼓動は速い気がする。

カバンから教科書を取り出して机の中に移し変えていると……。


「あれ~?もうてっきり学校辞めたかと思ってた」

ケタケタと笑いながら近づいてくる女子たち。
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