絶対に、離さないで。(仮)
「あ、雨・・・・・・」
またある日の放課後、突然雨が降り出した。
天宮と初めて話したときと同じ状況だ。
でも今日は、朝から雨が予報されていた。
おかげでばっちり大きい傘の準備がある。
「亜子、先帰るね」
「ごめんね。今日は料理部の集まりで」
亜子は料理部に所属している。
週2日の少ない活動だけど。
「ううん、今日もおいしい料理作ってね」
「はあい」
亜子と廊下で別れ、傘を差して学校を出る。
天宮はちゃんと傘を差しているだろうか。
そんなことを思いながらふと、いつも通りかかる公園へ目をやると、誰かが雨宿りをしている。
目をこらせば、それが天宮だとわかる。
「天宮くん!」
琴葉は駆け足で屋根のある場所へ行く。
天宮は傘を持っていない。
髪も肩も濡れている。
琴葉は、鞄からタオルを出すと、頭に掛けてやる。
「また傘持ってきてないの!?」
「別にいいだろ」
なんだか覇気がない。
琴葉の掛けたタオルもすぐに取ってしまう。
「もうやり直せないことをいつまでも後悔して、バカみたいだ」
「何を・・・・・・後悔してるの?」
「感情をあらわにしたことだよ」
「それの何がいけなかったの?」
「俺が、あんなこと言わなければ・・・・・・押さえていれば、そうすれば___」
クッと歯を食いしばる。
言いたくても言い出せない後悔。
「っ!俺は何言って・・・・・・」
よく知らない琴葉に、自分の胸の内をあらわにしてしまったことに、自分でも驚き、口を手で覆った。
「帰ろうよ、天宮くん」
琴葉は、ばつの悪い顔をする天宮に追求することはなく、明るい声で立ち上がった。
天宮は何も言わずに、琴葉の開く傘を手に取った。