絶対に、離さないで。(仮)
またも別の放課後___
天宮が靴箱を開けると、中に一枚の手紙が入っていた。
ラブレターだ。
「(またか)」
手紙で告白されることは何度もあった。
しかしここ最近、数日置きに同じ封筒の名前も書かれていないラブレターが入っている。
大抵は、手紙を入れた翌日に教室へ訪ねてくるのだが、今回は一度も現れない。
天宮はさすがに気になって中身を確認する。
『天宮くんのことを愛しています。天宮くんがラブレターを読まずに捨てることは知っています。それでも、この気持ちを抑えることはできません。どうか、この好きという気持ちを受け取ってはいただけませんか。もし受け取っていただけるのであれば、会いに来てください____』
天宮は顔も知らない人間の好意なんて嬉しくもなんともない。
そもそも興味がない。
「(受け取れるか)」
会いに来いと書いてあるが、場所の記載はない。
「(バカなのか、こいつ)」
手紙を仕舞おうすると、ひらりと一枚の紙が落ちた。
拾おうと身をかがめ、手紙に視線をやったところで身体は固まった。
その紙一面に「好き」と呪いのごとく書き詰めてあったからだ。
身震いがした。
さっと拾うと、全てを半分に破り捨てた。
「ああ!なんで破いちゃうのっ」
「っ!?」
大きな声に肩が一瞬はねる。
「ラブレターでしょう、それ。折角気持ちを込めて書いたモノなんだから破くなんてひどいよ」
琴葉だ。
「これ、アンタが書いたの?」
「え、違うけど、手紙には気持ちがこもってるものでしょう?天宮くんを好きだって気持ちが」
「そんなもの迷惑なだけだ」
「でも・・・・・・」
いつもなら、ここで破くことはせずに、持ち帰って読まずにシュレッダーにかける。
面倒な人間に見られた。
「ほら、貸して」
「(粉々にはなっていないし、直せるよね)」
「待っ___!」
制止も間に合わず、琴葉は手紙を手に取る。
「す、凄い・・・・・・」
2枚目のあの文字の羅列の髪を見てしまったのだ。
「顔も名前も知らないやつにそんなの送られてきたら嫌だろ」
「そ、そうだね・・・・・・」
ごめんね、と言って手紙を天宮に返す。
確かに、顔も名前も知らない人にこんな呪いじみたラブレターを渡されたら怖い。
「その手紙、どうするの?」
「帰ってシュレッダーにかける」
「そ、そっか」
少しの気まずさを残して、二人は結局また並んで帰った。