絶対に、離さないで。(仮)


「う、カビ臭い」


資料室に入るなり、臭うカビ臭さ。


「というか、うちの学校の資料室ってこんなに広かったんだ」


入ってすぐ両側に棚、通路のようになっているそこを進み、突き当たりを左に曲がると正方形の広い空間と壁一面に高い棚が並んでいる。


窓を開けて換気をする。


早速掃除を始める。


それにしても散らかっている。


先生たちの使い方、荒くはないだろうか。


中央のテーブルには、資料の山がある。


これじゃあ、掃除しようにもできない。


「まずはこの山をどうにかしよう」


ジャンルごとに分け、それぞれの棚にしまっていく。


「んー」


「(ここの棚高すぎるよ)」


「貸して」


天宮の手が伸び、琴葉の手から本を取り、本棚に収める。


「あ、ありがとう」


「俺は本を戻していくから、浅葱”さん”は掃除して」


「わかった。”浅葱”でいいよ」


「そう」


初めて名前で呼ばれた。


「(嬉しい、かも)」


何でもないことなのに、嬉しかった。




















ドクンと心臓が痛む。




(なんだろう・・・・・・)
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