絶対に、離さないで。(仮)


次の日は土曜日。


亜子と遊ぶ約束をしていた。


しかし、今日はあいにくの雨。


天気予報では、明日には晴れるらしい。


故に、約束は明日に変更になった。


「暇だなあ」


雨が降っているときに外に出るのは少々ためらわれるが、かといって家でやることも少ない。


ぼんやりと、もう何度も開いた画集を眺める。


こんな休みの日は、天宮は何をしているのか。


琴葉は休日でも天宮の顔が浮かぶようになっていた。


「琴葉~」


階段下から琴葉を呼ぶ絵里子。


なんだろう?と階段を降りると、ふわっと甘い香りがした。


ソファでは、父・智久が米国新聞を読んでいた。


「なに?この甘い香り」


「じゃーん、カップケーキよ」


甘み匂いの元はキッチンから。


カップの中の膨らみに、着色したクリームが絞ってある。


「おいしそう・・・・・・!」


「まだ食べちゃダメよ。出来のいいやつは天宮くんにあげるんだから」


「天宮くん甘いもの平気なの?」


「昨日こっそり聞いたらね、好きだって」


「(いつの間に)」


「と言うわけで、天宮くんに家に届けてあげなさい。うちから近いんでしょ?」


「でも雨だよ?」


「あら、それがどうしたって言うの。つべこべ言わず、ほら、着替えて行ってらっしゃい」


「はーい」


琴葉はすぐに身支度をとと終えると、傘とカップケーキを持って家を出た。





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