絶対に、離さないで。(仮)
長ズボンにパーカーの、みたことあるラフな格好でリビングへ戻ってくる。
既にテーブルには、カップケーキの乗ったお皿とティーカップがある。
向かい合って座り、紅茶をひと啜り。
「(あたたまる・・・・・・)」
次にカップケーキを一口齧る。
「!!」
「(思ってた通り、おいしい!さすがお母さん。今度作り方教えてもらおう)」
チラリと天宮に視線をやると、一応カップケーキを食べていた。
何も口にしないし、顔にも出さないけど。
「どう?」
「おいしい」
「良かった。お母さんにもそう言っておくね」
静かに、カップケーキと紅茶を共に堪能する。
「・・・・・・天宮くん。大きなお世話かも知れないけど、私に何かできることはあるかな。例えば、愚痴の吐き溜め場になってくれ、とか」
天宮は口ごもる。
「(何考えてるんだろう)」
しばらくして、思い口を開き始めた。
「今日は、しばらく・・・・・・近くにいて」
「へ」
琴葉は目を点にした。
予想外だったのだ。
普段人を寄せ付けない天宮か、その逆、近くにいて欲しいと言うなんて。
口をパクパクするだけで肝心の言葉が出ない。
「それとも、このあと用でもある?」
「ない、よ」
「そう。ならよろしく」
「ちなみに、理由を聞いてもいいかな」
「今日だけは、不安だから。俺が、俺でいる為に、そばにいて欲しい」
「うん、わかった」