幼なじみじゃ、なくなった夜。






振り向くと、スーツ姿の―――涼平。




「夏帆あんまり酒強くなかっただろ?もう顔真っ赤じゃん」




一瞬、榎波かと…思った。




いや、ここはいつも榎波と行ってた居酒屋じゃないし。


こないだのマックみたいに、そう偶然会うわけないんだけどっ!





「…なんか、拍子抜けだな」




そう言って、涼平が私の隣の席に腰かけた。



涼平も一人、なのかな?




「もっとビックリしてくれるかと思ったのに。他に会いたい奴でもいた?」




ほ、他に会いたい奴って。




ふっと頭を過った榎波の姿を、グイッとビールを煽って追い払う。




会いたいとかそんなんじゃないし。断じて、そういうんじゃないしっ!





「ちっ違うよ。ていうか十分ビックリしてるから。まさかこんな所で涼平と会うなんて」



「俺も。ここ、こっち来てから一人でよく来てるんだよ。なんか、一人でも入りやすいだろ」



「あー…確かに」



「で、夏帆は。こんな所でヤケ酒?」



「ヤ、ヤケ酒っていうか…ちょっと、気合い入れようかと思って」





私は、最近仕事でミス続きでいることを話した。




「だから、このままじゃいけない!と思って。切り替えようと思って」



「なるほどね。ま、とりあえず今日はこれ以上酒禁止ね。夏帆すぐ酔っぱらうから」




そして私の手からビールジョッキを取り上げる涼平。




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