幼なじみじゃ、なくなった夜。
「榎波と一晩を共にしてしまったと」
ふむふむと真顔で頷く愛理に、私は猛烈な恥ずかしさに襲われた。
「な、なんかその言い方卑猥でやだ…!」
「で、どうだった?」
「どう?」
「気持ちよかった?」
気持っ…!?
「覚えてないよ!!」
「ほんと〜?」
疑り深そうな瞳で私を覗き込む愛理。
…いや、実は時間が経つにつれ、段々と、断片的にだけど、…思い出してきていたりする。
榎波の私を触る手つきとか、
息遣いとか、
そして、目の前が真っ白になった、瞬間とか…
「だからなーに赤くなってんのよ!」
バコンと再び愛理に頭をど突かれて、胃の中のものが逆流しそうになった。
「だから、二日酔いの人叩くの禁止!」
「ほんとは覚えてるんでしょ。
気持ちよかったんだ〜?」
「う…!
そ、そうだとしても!私と榎波だよ?
別に何にもないから」
そうだよ。
あの、ランドセル背負ってる時から知ってる榎波だよ?
たった一夜の過ちで、どうこうなるとか…ないから。ないない。