幼なじみじゃ、なくなった夜。






「…そういえば榎波と夏帆っていつからの付き合いなんだっけ?」



「え?んと…小1、かな?」



「うわ、マジか。すげーなそれ」





涼平がク、とグラスに視線を落としたまま笑う。




「あ、俺さ。実は夏帆と付き合うときに、チラッと変な噂聞いたことあって」



「噂?」



「うん。榎波は実はずっと前から夏帆のことが好きで、いつも夏帆の行く学校リサーチして自分も合わせてんだってさ」



「へ…へぇ」



「それで小学校から就職先まで同じって、ちょっとヤバいよな?
普通にストーカーじゃん」



「え…いや…」





なんだろ。


お酒飲みすぎた?



心臓がバクバク、する。





「アイツ俺のことストーカー呼ばわりしてたけどさ、自分の方がよっぽどヤバいだろって。な?」



「いや…あの…」



「気持ち悪いんだよ。つーか、ここまでくると不気味…」



「やめてよっ!」





気づいたら立ち上がっていた。





「私たちのこと何も知らないクセに、バカにしないで!」






…あ。




気づいた時には、遅かった。




涼平が驚いたように私を見上あげている。





わ…私…何、エキサイトしてるんだろう…。




ここがうるさい居酒屋だったのがせめてもの救いだ。





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