幼なじみじゃ、なくなった夜。






「…何これ?」




そしてやってきた金曜日。



愛理に導かれるまま辿り着いた居酒屋には、既に大勢の見知った顔がテーブルを囲んでいた。




…何で




「何でこんなにいっぱい会社の人たちがいるの!?」




経理部の先輩全員いるじゃんっ!!




「今日は二人じゃ」


「ごめんごめん、実は今日、経理と営業の親睦会なんだよね♡」


「…は?」




親睦会…?しかも営業と…?




「何でこんな嘘!?」


「だってホントのこと言ったら夏帆来なかったでしょ?」



愛理のグロスで光った唇がニ、と綺麗な弧を描く。




「きっかけが欲しかったんだよね。夏帆と榎波が、ちゃんと話し合うきっかけが」



「…え?」



「だって最近の夏帆、ちょっと、かなり?おかしいし。榎波と全く喋ってるとこ見ないし。
榎波も榎波でなんか余所余所しいしさ」


「…そんなこと」


「あるでしょ?だから、ちゃんと話し合いな、逃げないで」




愛理が、真っすぐ、真剣な顔で私を見る。



「それに…実は私…最近狙ってるいい男が営業にいてさ」


「…は?あんた彼氏いるじゃん」


「それはそれ♡これはこれ♡じゃ、そーゆうことで♡」




そして愛理はさっさと私に背を向けると、狙っている男なのだろうか、ちゃっかりイケメンの隣をゲットすると笑顔で会話に混ざり始めた。




…まったくもう。結局自分の為かい!



はぁ、とため息をついたところで。…見つけてしまった。




愛理より、もっと奥の席で




楽しそうに話す、榎波と、足立さんの姿を。





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