幼なじみじゃ、なくなった夜。
「…なんだよ足立」
バツが悪そうに私から少し離れる榎波。
「先輩が遅いから様子見に来ただけです。迷惑でした?」
「…別に。今戻ろうとしてたとこだよ」
そして榎波は何か言いたげに私を一瞥した後、ふんと顔を歪めて歩いていった。
残された私と、足立さん。
足立さんが口紅で赤く彩られた唇の口角を綺麗に上げる。
「やっとフッたんですね、榎波先輩のこと」
「…何でそれ…」
「聞いてないですよ。でも様子見てれば大体わかります。前も言いましたけど、榎波先輩分かりやすいんで。あ、瀬戸内先輩もですけど」
そして足立さんは私の耳元に顔を寄せると
男なら誰でも腰抜けになってしまいそうな可愛らしい声で
「ありがとうございます♡」
そう艶やかに囁いて、榎波の待つ喧噪へと、戻っていった。