幼なじみじゃ、なくなった夜。






「…いったぁ、何すんだよ榎波~」



つかまれた肩を痛そうに擦りながら、不服そうに口を尖らせる浜崎先輩。



そして、そんな浜崎先輩をきつく睨みつけている――榎波。



「邪魔すんなよなぁ、今チューしようとしてたんだから」



そして再び私に向き直ろうとした先輩を




「チュー禁止!」




榎波が思い切り肩をつかんで引っ張った。




「ちょっ、だからいてぇって!何だよ、何でそんな怖い顔してんだよ~?
俺がカワイイ子にチューするのなんていつものことだろ~?」




いつものことなんかい!


酔った頭の中で一人突っ込む。


…やばい、そんなことしてたら、なんか頭痛くなってきた…。




「そうですけどコイツはダメです」



頭を抱えだした私をチラリとみて、榎波がキッパリとそう言い放つ。



「よく見て下さいよ、コイツそんなに先輩のタイプの顔じゃないでしょ?」


「え~?そぉ~?」



うぅ…なんか失礼なこと言われてる気がする…。



「それに…」


「それに~?」





ズキズキする。


心臓の鼓動にあわせて、頭の内側からハンマーで叩かれているみたい。





もうダメだ…。




ズル、と力尽きた私を、誰かの力強い腕が支えてくれた。






「俺がコイツのこと好きなんで、絶対ダメ」






< 129 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop