幼なじみじゃ、なくなった夜。
「…いったぁ、何すんだよ榎波~」
つかまれた肩を痛そうに擦りながら、不服そうに口を尖らせる浜崎先輩。
そして、そんな浜崎先輩をきつく睨みつけている――榎波。
「邪魔すんなよなぁ、今チューしようとしてたんだから」
そして再び私に向き直ろうとした先輩を
「チュー禁止!」
榎波が思い切り肩をつかんで引っ張った。
「ちょっ、だからいてぇって!何だよ、何でそんな怖い顔してんだよ~?
俺がカワイイ子にチューするのなんていつものことだろ~?」
いつものことなんかい!
酔った頭の中で一人突っ込む。
…やばい、そんなことしてたら、なんか頭痛くなってきた…。
「そうですけどコイツはダメです」
頭を抱えだした私をチラリとみて、榎波がキッパリとそう言い放つ。
「よく見て下さいよ、コイツそんなに先輩のタイプの顔じゃないでしょ?」
「え~?そぉ~?」
うぅ…なんか失礼なこと言われてる気がする…。
「それに…」
「それに~?」
ズキズキする。
心臓の鼓動にあわせて、頭の内側からハンマーで叩かれているみたい。
もうダメだ…。
ズル、と力尽きた私を、誰かの力強い腕が支えてくれた。
「俺がコイツのこと好きなんで、絶対ダメ」