幼なじみじゃ、なくなった夜。
途切れ途切れの記憶の中で、僅かに覚えているのは、タクシーに榎波と二人で揺られていたことと、榎波が「重っ!」と叫びながら私をベッドに寝かせたこと。
「…重いって…失礼…」
ズキズキフワフワする思考の中でもそう忘れずに文句を言うと、榎波がハ、と可笑しそうに笑った。
そして
「安心しろよ、今日はお前のベッドだから。…ゆっくり寝な」
…最後に頭をひと撫でされたのは、夢だったのか。
バタン、というドアが閉まる音を聞くのと同時に、私は深い眠りの世界へ落ちてしまった。