幼なじみじゃ、なくなった夜。






「よ、夏帆」



なんだか気疲れして給湯室で一息いれていると、マグカップを持った愛理がやってきた。




「愛理~…なんか私、今日色んな人に噂されてる気がするんだけど…」



「はは、まぁ仕方ないね、あんな事があっちゃ。夏帆は今全女子社員の嫉妬の的だから」



「あんな事って?」




するとコーヒーを淹れる準備をしていた愛理の手がハタと止まり、まじまじと私を見る。




「まさか覚えてないの?」



「え、何を?」



今度は私が愛理をまじまじと見つめる番だ。



愛理はその大きな瞳で瞬きを一つしてから、「そっかぁ、かなり酔ってたもんな~榎波カワイソー♡」と今度はニヤニヤし始めた。



「え、何、榎波?」


「うん。榎波に聞いたらわかるんじゃない?」


「は?」




それ以上愛理は私に何も言う気はないらしい。



意味深にニヤニヤしながらコーヒーを淹れ終えると、「じゃ♡」とあっけなく去っていこうとする。




「ちょっと、ていうか嫉妬の的って…?」



「さぁ?ごはんに毒、入れられないように気をつけな」




毒!?






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