幼なじみじゃ、なくなった夜。





“俺があんな所でお前のこと、好きとか言ったから”



…気を抜くとすぐにあの言葉が耳の奥で木霊する。





好き、って言ったって。






…いつ!?





思い出そうとしても、思い出せない。



浜崎先輩にキスされる寸前に榎波が助けてくれたことは覚えてる。


あの時はもうクラクラしてて、榎波と浜崎先輩が何やら話していたのは記憶にあるけど、何を話していたのかまではわからない。




もしかして…あのときに…?








悶々としたままの帰り道。



結局一時間ほどいつやってもいいような雑務をダラダラとした後、私は帰路についた。





「瀬戸内先輩っ!」




会社から出てすぐのところで、鈴の弾むような、可愛らしい声に呼び止められる。




振り向くと、ピンヒールを華麗に履きこなした足立さんが、コツコツと音をたててこちらに歩いてくるところだった。






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