幼なじみじゃ、なくなった夜。
「偶然ですね、瀬戸内先輩も残業ですか?」
「まぁ…そうだね」
あー…なんとなく、今一番会いたくなかったのになぁ…。
なんて失礼なことを思いながら、曖昧に愛想笑いする私。
「途中までご一緒してもいいですか?」
「え?あ、あぁ、うん」
そしてなんと一緒に帰ることになってしまった。
コツコツとピンヒールが鳴る度に、足立さんの綺麗にハーフアップにされた巻き髪が揺れている。
今日も女子力最強だ。
「金曜日は大変でしたね」
しかもいい匂いするし、なんて変態チックなことを考えていると、足立さんが不意に私の方を見たのでドキッとしてしまった。
「金曜日?」
「はい。浜崎先輩に絡まれてたでしょ?浜崎先輩、普段はいい人なんですけど、女にはちょっとだらしないんですよねぇ」
「あ、そうなんだ…」
ほぉ、と憂いを帯びたため息を漏らす足立さん。まるで何か思うことがあるかのように。
浜崎先輩、同じ営業だし、こんなに可愛い足立さんにはもちろん手、出しちゃってそうだなぁ。
「…でも。よかったですね、榎波先輩が助けてくれて。私、惚れ直しちゃいました」
「……あ、そっか…」
…そっかって。なんだよ、私。と思ったけど。
他に何を言ったらいいかわからなくて。舞い降りる沈黙。