幼なじみじゃ、なくなった夜。





会社のエントランスに着くと、案の定まだ榎波は来ていなかった。



当たり前だけど会社帰りの人がたくさんいる。



こんな中で榎波を待つなんて


気まずすぎる…!




やっぱり現地集合で、なんてLINEがこないかなぁなんて思いながらテキトーにスマホをいじっていると




「悪い、待たせた」




聞き覚えのあるその声にパッと顔をあげる。


僅かに息を切らしている榎波。どうやら急いできたらしい。いつもよりも全然、早いのに。


ていうか、やっぱり何か、ちょっと気まずい。いかんいかん。いつも通りに、いかなくちゃ。




「もう仕事終わったの?」


「ああ。つーか終わらせた」


「ふーん。ていうか何で今日はわざわざ…」




わざわざエントランスに集合なんてしたの?と聞く間もなく。

榎波が、まるでいつもそうしているかのようなナチュラルさで、私の右手を取った。




「え」


「行くぞ」




グイ、とその手を引っ張る榎波。



あまりに突然のことに、私はなすすべもなく、タイミングよく来たエレベーターに2人で乗り込んだ。




< 15 / 162 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop