幼なじみじゃ、なくなった夜。
中も外見の期待を裏切らずオシャレで、落ち着いた音楽と薄暗い照明が半端なくオシャレ感を醸し出していた。
やばい、こんな所来たことない。ドラマのロケ地かよ。
落ち着かずそわそわする私とは対照的に、慣れた仕草で椅子を引く榎波。
「ほら、座れよ」
出た!ジェントルマン榎波、発動!!
「あ、アリガトウゴザイマス」
「なんで片言?」
思わず片言になる私に、ふっと榎波が笑う。
このオシャレバーの力なのか、そんな榎波の笑い方までなんだかオシャレに見える。
「ねぇ、何で今日はここなの?」
バーテンダーさんにそれぞれお酒を注文した後そう聞くと、榎波は飄々と、別に、と言った。
「ただ、いつもの居酒屋じゃかっこつかないだろ」
「かっこつける必要ある?」
「あるわ。好きな女を口説く時くらい、かっこつけたいっつーの」
…え…
思わず固まる私と、私を見た榎波の視線がぶつかった。
飄々とした口ぶりには似合わない、強くて、熱い瞳。
…こんな榎波、見たことない。