幼なじみじゃ、なくなった夜。
その時、注文していた私のカシスオレンジと、榎波のジントニックが運ばれてきた。
私は慌てて視線を逸らして、カシスオレンジを手に取る。
そして乾杯もせずに、一人でゴグゴク飲んでしまった。
…や、やばい。何動揺してんのよ私!
こんなの冗談じゃん。冗談に決まってるんだから、真に受けちゃダメなんだって。
私はカシスオレンジのグラスを置くと、平常心を装ってアハハ、と笑ってみた。やばい、ちょっと棒読み感が。
「何言ってんの榎波。あ、分かった!榎波、女の子口説く時いつもこのお店使ってるんでしょ?どーりで、慣れてるもんね〜」
てっきり、あ、バレた?なんて言い返してくると思ったのに。
「はぁ?ここ来たのはじめてだし。女を口説いたこともないけど」
「またまた〜!高校時代、あんだけ彼女途切れなかった奴がよく言うよ」
「あんなの勝手に寄ってきただけだ。
俺が口説きたいと思ってんのは今も昔も、ずっとお前だけだから」
な…!!
あまりの甘いセリフのオンパレードに、私はなんだかクラクラしてきた。
ど、どうしちゃったの榎波…いつもは全然、こんなこと言うキャラじゃないじゃん。
いつも二人でビール片手に仕事の愚痴やら、バカみたいにくだらない話しかしてなかったじゃん。
それをどうして急に、こんな…!!