幼なじみじゃ、なくなった夜。
なんだかいてもたってもいられなくなって、私は残りのカシスオレンジをグイッと一気に飲み干した。
「おい、無茶な飲み方…」
「私っ!!」
榎波の言葉を遮って立ち上がる。
そしてお財布の中から適当に引っ張り出したお札を、榎波のジントニックの隣に、叩けつけるようにして置いた。
「は?何この金」
榎波の瞳が怪訝そうに細められる。
「あ、あの…急用思い出したんで…帰るわ!じゃっ!」
「はぁ!?ちょっと待っ…!」
我ながら酷い言い訳だ。
だけど、気の利いた言い訳を考える余裕は、今の私にはまるでなくて。
……一回帰って、頭を冷やしたい。
落ち着きたい。榎波の冗談を、笑って受け流せるくらいには。この変にバクバクした心臓を、鎮められるくらいには。