幼なじみじゃ、なくなった夜。
「…お前のこと幼なじみだなんて思ったこと一度もない」
まわりの音、全部なくなったみたいに。
聞こえるのは榎波の声と。
見えるのは痛いくらい真剣な表情の榎波だけで。
「ずっとお前は、俺にとってはただの、好きな女だった」
…わたしずっと、こんな素敵な偶然あるんだって思ってた。
小学校から、入社した会社までずっと一緒で、なんでも話せる親友で。
そしてきっと、この関係はこれからもずっと続く。そう信じて、疑ってなかった。
…だけど、いつから違ってたんだろう。
昨日の夜から?
それとも、はじめて出会った、あの日から?
一歩、私の方へ踏み出した榎波に、反射的に私も一歩後ずさった。
「…夏帆「信じない」
だって
「信じられないよ…!」
榎波は私にとって一番近い存在で、だけど…恋愛とは一番遠い世界にいた人だから。