幼なじみじゃ、なくなった夜。
まだくっついてなかったの?
「はぁ…」
仕事中。いつものように請求書のデータを打ち込みながら、気付いたらため息が漏れている。
本日、何回目のため息だろう。そして、一体何に対してのため息なんだろう。
もう頭の中ごちゃごちゃで、何から考え始めたらいいのか分からない。だけど、それでも仕事は毎日のように降ってきて、尽きることはない。だから、とにかく今は目の前の仕事に集中…集中だ!!!
「夏帆〜、榎波が呼んでる」
「っは!?」
カタンッ
思わずビクッと体が跳ねて、その弾みで誤って違うキーを押してしまった。
「ったく、全然集中できてないじゃん」
マグカップを持った愛理が自分の席に座る。どうやら給湯室へ行ってきたらしい。
「…え、もしかして今の嘘?」
近くに榎波の姿はない。
愛理はそうだけど、とアッサリ白状した。
「え、なんでそんな嘘言うの?」
「別に〜?ただ夏帆朝からずっと様子おかしいから、榎波と何かあったのかなぁと思って」
当たり?
愛理が得意げに口角をあげる。
ったくもー…なんて心臓に悪い嘘を!!
「嘘つきには教えませーん」
「ふーん。きょうの夜詳しく聞くわ♪」
愛理め…なんか楽しそうだな!こっちは悩みすぎてハゲそうだというのに!!