幼なじみじゃ、なくなった夜。
「榎波〜!ここ教えて!次の数学当てられそうでさ!」
「はぁ?お前こんなのも分かんねーの?やっぱバカかぁ…」
「ちょっと、しみじみバカって言うのやめてよね。いいから早く教えて!」
「ったく、仕方ねーなぁよく聞いとけよ。こういう問題はまずこの公式を当てはめて…」
…目を開けると、そこはさっきまでいたはずの教室でもなく、私は苦手な数学の授業に怯える高校生でもなかった。
夢、かぁ。
白い天井を眺めながら、ボンヤリ脳が覚醒し始めるのを待つ。
高校時代の夢なんて見たのは初めてだ。
そういえばよく、榎波に課題見せてもらってたっけ。
榎波、昔から頭良かったもんなぁ。
私もそんなにバカな方でもなかったけど、数学だけは本当に苦手で。
榎波ならもっと上の学校行けるのにって、ずっと思ってた。
…あえて私と同じ学校にしてたって…その上、会社まで。
あれが本当なら、あんた大バカ者だよ。榎波。