幼なじみじゃ、なくなった夜。
「だっ…大丈夫だよ〜!榎波も知ってるでしょ?私体だけは丈夫だからさ!」
榎波の真っ直ぐな瞳から視線を逸らして、笑って逃げることしかできない私は何て臆病者なんだろう。
そう思うけど、まだ私には榎波と向き合う覚悟も、決意もできていない。
だから
「…じゃ、お疲れ!」
今はまだ、逃げることを許して。
ギュッとカバンを両腕に抱き締めて、今度こそ走り出そうとすると
「っだから待てって!」
グ、と引き戻された腕。
切羽詰まった声に、切なそうに顔をしかめた榎波に…私は腕を振り払うことを忘れて、榎波と向き合った。
「…避けんなよ」
絞り出すようなその声が、胸に刺さった。