幼なじみじゃ、なくなった夜。
…榎波の言葉が、一本の矢となって胸に刺さる。
知らなかった。榎波ってこんな、胸キュンセリフを言う男だったなんて。
「〜〜、なんかずるい!」
「何だよ…ま、これでも大きな進歩だよな」
先に歩き始めていた彼に追いつくと、榎波は私に合わせて少し歩を緩めた。
「考えてくれるんだろ?
告った時は、信じてすらくれなかったのに」
「…う」
なんか、耳が痛い…。
消え入りそうな声で「それは…ごめん」とゴニョゴニョ謝った私に、別に責めてねーよ、と榎波が言った。
「知ってたし。お前が俺を男として見てないことくらい。だから、考えてくれるだけで嬉しい」
…不思議だ。なんか
「榎波が大人に見える…」
「はぁ?バカにしてんのかお前は」
大げさに顔をしかめた榎波は、久しぶりに見た、私のよく知る榎波だった。