幼なじみじゃ、なくなった夜。
だって冗談じゃないから。
「よし!間に合った〜!」
グーグルマップを駆使し会社に着くと、むしろいつもより少し早い時間だった。
アイツのマンションはどうやら、私のマンションよりも綺麗で、そして私のマンションよりも会社に近いらしい。
同じ会社に勤めているはずなのに…くそ〜…不条理だ!!
「夏帆」
「あ、愛理おはよ…」
「ちょっとこっち来て」
「えっ?」
そして着くやいなや、同じ経理部で同期の愛理に連行される。
連れてこられたのは女子トイレだった。
「ここ、見てみ」
鏡に向き合わされ、愛理に指差されたところを見てみると…
「げげっ!?」
「ったく。そういうのは学生までにしときなさいよ」
私の首には、くっきり、赤い痣が残されていた。
そう、それは誰が見ても明らからな、キスマーク…!
ふっとその瞬間、蘇ったのはチクリと首もとに走った鋭い感覚。
『…っ夏帆…!』
アイツの、声…。
「何赤くなってんの!」
フリーズしていると、バコッと思い切り愛理に頭を叩かれた。
「痛っ!二日酔いの人を叩くの、ダメ、絶対!」
「どうりで酒臭いし服も昨日と同じだと思ったら…。何アンタ、もしかして酒の勢いで誰かとヤったってこと?」
「ちょっ声が大きい!」
「いいじゃん別に、誰もいないし」
ふふん、と不敵に微笑む愛理。
「で、誰なの相手は」
「そ、それは…」