幼なじみじゃ、なくなった夜。
「…あの…なにこの展開?」
「それは俺が聞きてーんだけど」
会場を出て、少し歩いたところの物陰に引っ張り込まれた私は、壁に押し付けられ、さらに至近距離から榎波に睨みつけられていた。
前には榎波。後ろには壁。左右には榎波の無駄に長い腕…絶体絶命だ!
「な、なんか怒って…る?」
「怒ってねーよ。イライラしてるだけだ」
やっぱり怒ってんじゃん!!
さっきまで女子とニコニコ楽しそ〜に話してたくせに…
「お前さぁ」
私を睨みつけたまま榎波が口を開く。
「何やってんの?」
「な、何って…」
「なに松岡と連絡先交換しようとしてんの?しかもガバガバ酒飲みやがって。自分がそんなに酒強くないの知ってんだろ?」
「そ、そんなに飲んでないよ!」
飲みたかったけど途中で舞香に止められたから!
「…その割にはトロンとした目してるけど?」
クイッと、榎波が抗議した私の顎を持ち上げる。
ますます近くなった距離に、心臓がドクッ、と不規則に跳ねた。
「無防備すぎんだよお前。俺以外の男の前で酒飲むんじゃねーよ」