幼なじみじゃ、なくなった夜。
私の住む、そして職場がある街はビジネス街で、朝はいつも道ゆくビジネスマンやキャリアウーマンでいっぱいだ。
それぞれの職場に向かう人々に流されるようにして、会社までの道を歩く。歩きながら、今日一日のスケジュールを組み立てるのが私の日課だ。
今日は急ぎの請求書の案件があるから、それを一番に片付けよう。午後一の会議の為の資料も用意しとかないと。…あ、そういえば職場のコーヒー残り少なくなってたかも。コンビニに寄って買っていこうかな。あと…
「榎波先輩っ!」
そう、それと榎波先輩……は?
朝の忙しくも秩序ある空間には少し不釣り合いな甲高く可愛らしい声。
見ると、少し離れたとこにいる榎波に、可愛らしい女の子が駆け寄っているところだった。
「おはようございます、榎波先輩っ!」
「おー、足立。おはよ。朝から元気だな」
「そうですか?いつも通りですよっ!」
仲よさそうに肩を並べて歩いていく2人。
フワフワとした栗色の髪の毛がキラキラ太陽に反射している。
誰だろう…?あんな子、職場にいたっけ…?
どうやら知らないうちに立ち止まっていたらしい。
ドンッという後ろからの衝撃で我に返った。