幼なじみじゃ、なくなった夜。
じゃぁ、俺と付き合えよ。
結局、その日は涼平に会うことは出来ずに解散となった。
翌日、出社する途中も少し緊張したけど、やっぱり涼平に会うことはなかった。
まぁそうだよね。いくら近くの会社とはいえ、そうそう遭遇することなんてないだろう。
いつも通り出社した私は、いつも通り粛々と業務をこなす。そう、いつも通り…の予定だったんだけど。
「瀬戸内くん、この資料もまとめといて、今日中に!」
なぜか今日に限って、鬼のように仕事を振ってくる部長。そして、心なしか人が少ないような気がする経理部…。
「…何かあったんですか?」
仕事を引き取りつつそう聞いてみると「隣の部署で大きいトラブルがあってね、ヘルプで人をいかせざるをえなくてね…」と慌ただしくパソコンのキーを叩きながら答えてくれた。
「納期迫ってるものも多いし、頼りにしてるよ瀬戸内くん!」
「はぁ…が、がんばります」
「あ、そうだ!ついでにコレも頼むよ、瀬戸内くん!」
そしてひまわりのような笑顔で新しい仕事を振ってくる。
これ以上仕事を回されたら堪らんと、私は「がんばりまーす」と曖昧な笑顔を残して自分のデスクに戻った。
あー…こりゃ残業確定だな、今日は。
「こりゃ今日は元カレ探しは無理だね。残念」
前のデスクから、山ほどの資料に囲まれた愛理が肩を竦めながら言う。
「ま、いいや。明日また元カレ探しにでかけるためにも、今日中に何としても仕事を終わらせてやるわ!」
そして並々ならぬ勢いでパソコンを叩き始めた。
愛理はどうやら、なんとしても涼平に会いたいようだ…。