幼なじみじゃ、なくなった夜。
愛理の謎に高いモチベーションに引っ張られつつ、私もなんとか目標の業務を終わらせ、部署を出たのはとうに定時を過ぎた午後10時過ぎだった。
「あ~肩凝った。帰って作るのダルいし、なんか軽く食べて帰らない?」
「お、いいね!」
そんな愛理の提案に、一つ返事でのる私。どこに行こうかと話しながらエレベーターにのりエントランスにおりると、
「…ねぇ、あれ榎波じゃない?」
「え?」
愛理に促されるままに視線をやると、誰もいなくなった受付の近くで、怠そうに壁にもたれかかりスマホをいじる榎波の姿があった。
こんな時間にこんな所で何やってるんだろ…?
不思議に思い見ていると、榎波が私達に気づいた。
「あ」
壁からやっぱり怠そうに体を起こす。
「やっと来たか。二時間くらい待ってたんだけど」
「…は?待ってたって誰を?」
キョロキョロあたりを見渡すけど、エントランスに私たち以外の姿はない。
「…はぁ。お前って…お前だよな」
深いため息と共に、そんな深いのか当たり前なのかよくわからないことを言った榎波は
「夏帆のこと待ってた」
真っすぐ私を見て、そう言った。