幼なじみじゃ、なくなった夜。
「それも本当かどうか、怪しいけどな」
「涼平がわざわざそんな嘘つくわけ…」
「アホか。お前、一度アイツに裏切られてんだぞ?何でまた信じようとすんだよ」
榎波の瞳がまた鋭くなって私を射抜く。
「…でも。本当に就活に集中したいだけだったのかもしれないし…」
実際のところ、あの街で見かけた女の子と、涼平が付き合っていたのかは定かではない。
もともと大学も違ったし、共通の知り合いもいなかったから別れてしまえば疎遠になるのは簡単だった。私も、確かなことなんてわざわざ知りたくないと思っていたし。
「…夏帆。お前」
近くの車道を走る車のライトが、私に向き直った榎波の顔を明るく照らして、あっという間に過ぎ去っていく。
「まだアイツのこと好きなわけ?」
「…は?」
…好き?
私が、涼平のことを?
「…何言ってんの?」
そんなことあるわけない。
もう別れてから何年も経つのに。
「…じゃぁ、俺と付き合えよ」