幼なじみじゃ、なくなった夜。
「…え?」
一瞬、聞き間違えかと思った。
だけど、痛いくらい真剣な榎波の表情に、それが聞き間違えなんかじゃないことを悟る。
「アイツのこともう好きじゃないんなら、俺と付き合えよ」
「…え、榎波。急に、どうし…」
「急じゃねーよ。夏帆がアイツと付き合ってる時からずっと思ってた。俺にしとけよって。俺ならお前のこと絶対傷つけないのにって。
…言いたかったけど、言えなかった。そう言ってお前との関係が崩れるのが怖かった」
…榎波。
ノロケ話も、愚痴も、そして別れたときも。
榎波にはどんなことも話してきた。それをそんな思いで、榎波が聞いていたなんて。
「…なぁ、夏帆。俺はいつまで待てばいい?」
そう聞く榎波の表情はどこか悲痛そうに歪められていて。
「榎波…」
「お前が俺のこと、考えてくれるって言ったときはすげぇ嬉しかった。一歩前進したような気がした。
でも、こうしてお前の元カレとか、同窓会で会った奴とか全員にすっげえ嫉妬して、余裕なくて。
ただ待ってるっていうのも正直…しんどいな」