幼なじみじゃ、なくなった夜。
「あの…さ、榎波」
「ん?」
私の声に振り向いた榎波が、次の瞬間険しい顔になって、グッと私の腕を引っ張った。
そんな私のすぐ後ろをスピードを出したトラックが通り過ぎて行く。
「…っぶね、スピード出しすぎだろ」
つかまれた腕と、至近距離の榎波の横顔。
「大丈夫か?」
「…あ、うん、ありがと」
ホッと息を吐いた榎波が、私の腕からゆっくりと手を離した。
そしてさりげなく車道側に立ち歩き始める。
…優しいね。
そう、榎波はなんだかんだ、優しいんだ。昔から。